グランドピアノのオーバーホール

2018/01/04 2018/08/08

ピアノの寿命は１００年とも言われます

実際、私がハンガリーに留学していたころ、自宅の練習ピアノとして恩師から借りていた楽器も、外側の塗装がところどころはげた８０年もののスタインウエイでしたが、細かいメンテナンスを繰り返しながらじゅうぶんに演奏できる楽器でした。

しかしピアノを長い間使っていると、内部の細かい部品が老朽化して不具合が出てきます。
・音色が美しくない
・鍵盤のタッチの差が大きく違い、音色にムラがある
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　などなど

小羽小学校に残っていた古いグランドピアノは、昭和４９年製造のものでした。
ざっと４０年以上！
平成２１年に閉校になってから８年間、一度も調律師さんの手が入っていません。
また体育館のステージ裏という、気温変化の激しく湿気の多いたいへん過酷な状況下にあり、ダメージは大きそうです。
どのぐらいの処置が必要なのか、全信頼をよせるピアノのお医者さんである、調律師の竹田さん（写真奥）に診ていただきました。

鍵盤を少し触ってその音色を聴いただけで、これだけ複雑な内部構造の中から、どのパーツのどの接続部分に原因があるのか見抜いてしまった！
普段の調律だけでは整えられない演奏のしにくさは、オーバーホールという形でピアノをリニューアルすることで、さらに長く使えるようになります。

オーバーホールは楽器の入院？

オーバーホールとは、ピアノの中身を工房に預けて、傷んでいる部分を徹底的に治療してもらうために入院させるようなものです。
工房で分解し、弦、ハンマー、フェルトなどの部品を新しいものに交換して再度組み立てる、大がかりな修理です。
そうすることで、老朽化したピアノでも本来の性能や音色を取り戻すことが可能になります。
そして小羽のピアノのリニューアルも、迷わず竹田さんにお願いしました。

本当に信頼できる技術をもち、実績のある調律師さんに頼みましょう

10数年前、この小学校のまさしくこのピアノを調律してくださったのも竹田さんでした。
竹田楽器の竹田さんは、ピアノの音色と構造の関係をお医者さんや神様みたいに知り尽くした調律師さんです。
幼少の頃から、いろんな調律師さんの作業は側で見ることが多かったのですが、竹田さんの作業様子がそれまでの誰とも異なり、いろいろな要望に対して仕上がった音色やタッチも大変満足のいくものでした。
何よりも、ピアノという楽器の可能性を追求する熱い思いに、びっくりしてしまいました。

妥協のない音づくり

「学校のピアノなんて大体こんなもんだろう」

どの学校の先生方もわりとそんな意識だし、それまで私自信も学校のピアノに美しい音色や精密に整えられた鍵盤のタッチは期待していませんでした。
好きになれない音色のピアノを、たいていの調律師さんは、音程だけを表面的に整えて点検終了することが多い中、竹田さんは全く違いました。
まず徹底的に中の掃除をすることで、こもった音色が驚くほどクリアに響くようになりました。
音づくりはここから始まります。
タッチのばらつきには、薄紙一枚の厚さを何度も何度も調節することで、音ムラのない理想的な楽器になります。
PPの部分の繊細な表現も、自分の指先への指示がそのままストレートに鍵盤から内部までに伝わり、まるで自分が上手になったように感じるくらいに音色となって返ってきます。
ストレスのなくいつまでも触っていたい楽器に生まれ変わります。

竹田さんの素晴らしいところは、大きなホールのスタインウエイだろうが、家庭のアップライトだろうが、学校でたくさんの子達が超高速で「ねこふんじゃった」を弾くピアノだろうが、一切妥協なく、ピアノの中身と徹底的に向き合って原因を見つけ治療してくれるところです。
いつも音づくり、タッチの調整、ピアノという楽器の可能性について熱く熱く語っておられます。